会う事ができた人に富や幸せをもたらしてくれるという、岩手では有名な聖霊。
そう、座敷わらし。
いわゆる神ですな。
子供の姿をしているって言うけど、一度は会ってみたいよね。
えっと、この際だからハッキリ言おう。
僕こそがその座敷わらしだ。
「ん?なんかヤバい奴出てきた?」
「そう言えば座敷わらしって、妖怪じゃねかった?」
とか思ったそこの君たち!早く改心したまえ。
僕が今まで、どれだけの富を与えてきたと思っているのだ。
一般の座敷わらしってのはな、商売してる一軒家とか、限られた人達にしか幸運を与えないのだよ。
しかも与えるのは自分を見てくれた人にだけ。
自分の滞在中は幸せいっぱいにしておきながら、いなくなる時はその効果も無くすんだってさ。
僕からしたらね、そんな奴は超気まぐれで、一流の座敷わらしとは言えないのだ。
そう僕の場合、彼らとはやり方が違う。
まず幸せをもたらすのは、僕が去ってからだ。
そして僕がいなくなった後には、必ずや繁栄が永く訪れるのだ!
これだけ行っても分からんか。そうか〜、まぁ理解できる訳ないわなぁ。
ならば一流の座敷わらしとはどういうものか、その功績を教えてやろうではないか。
ちなみにこれは、都市伝説でもでっち上げでもなく、実話だからよろしくね。
【目次】
1. プレハブを極めた学校時代
2. 進学、就職後に複合施設
■プレハブを極めた学校時代
まず僕が初めて座敷わらしの能力を発揮したのは、小学校を卒業する時のこと。
なんか6年生の秋くらいに先生がね、
「校舎を建て替えする事になったので、これからはプレハブで過ごす事になります」って言い出したの。
だから、「じゃあ卒業式は新しい校舎でやるんですね?」って喜んで聞いてみたの。
そしたら、
「完成はみんなが卒業したあとです」って返されて、泣いたよね。
これが座敷わらしの登竜門、いや使命なのかと、なんとか受け入れたよ。
僕がいなくなったあと、ここには立派な校舎ができて、後輩の生徒達が楽しく過ごせるんだ!チキショウ!って。
その後はゆっくりと変化を遂げていく校舎。出入り口の位置もまるで変って、名残りが薄れていくのを卒業まで静かに見守っていくしかなかったのであった。
あ、唯一体育館だけはリニューアルが間に合って、卒業式はそこでする事ができたからよかったかな。
さて、これくらいの事なら誰でも起こり得る。
こんな経験1回くらいだけでは、プレハブを極めたとは言えない。つまり次もある。
中学校だ!
この時もまた、建て替えの知らせが耳に入ったのは卒業前。しかも対象は体育館と来た。デジャビューが浮かぶと同時に嫌な予感がした。
卒業式が近付いてきても、一向に新しい体育館への立ち入り禁止標識が無くなる気配がないではないか。結局卒業式は、仮設のプレハブ体育館で実施されたのだ。
最後に歌った校歌のエコー(響き)が、今までよりも低くて音質悪いCDみたいになってしまったが仕方ない。今となってはいい思い出だ。
またしても、僕が卒業した後に後輩達がいい施設を使えるようになるのか。
ほんと僕の後輩達はラッキーな奴らだぜ、チキショウ!って感じで、少しも悔しがらずに中学をあとにしてやったぜ。
ここまで小、中学と座敷わらしの使命を果たしたから、もういいと思うでしょ?でもな、一流はこれでは終わらないのだよ。さぁ高校編行ってみようか。
高校の時は、もう歴史が古い学校という事もあって、入学した時から臭いし校舎古っ!!て思ってたくらいで。最初からマジで改築してほしかったね。
古い建物が治安も悪化されるのか、進学校のくせに財布盗まれたもんなぁ。環境は絶対良くなかった。
そんなボロ校舎が建て替えになるという話は、やはり卒業前の3年生夏ごろと来た。
おい!いい加減にしろー!
1回ぐらい綺麗な新しい校舎を体験させろよっ!
て言ったところで、運命は変えられない。
2学期からは、またプレハブ校舎での生活となってしまったわけ。
新校舎はまた間に合わずそのまま卒業。
あとから見たらね、新校舎は2階にプールがある近代的な造りになってやがったよ。
こうして、数々の立派な校舎をもたらした座敷わらし(僕)は、ついに世に出て行く事になった。
ちょっと長くなりそうだから、前編はここまでにするわっ。後編もよろしくね!
一先ず、ジャーねっ!